宗教について 〜 人の生と死を考える 注78

公開: 2023年3月29日

更新: 2023年4月17日

注78. 知的財産

財産とは、一般に、価値のある個人的所有物を言います。例えば、金銭であるとか、高価な家具であるとか、家や土地などを言います。これに対して、価値は高いものの、物質的な形を持たない、人間の頭の中にある知識や経験なと、無形な財産で、それを生み出した人の知識と思考が重要な要素である場合、その財産を生み出すために使われたアイデアや知識を「知的財産」と呼びます。

資本主義の発展に伴い、その知的財産の重要性は、売買される物を構成する材料を加工する費用よりも、最終的な商品を生み出すための知的財産の価値の方が、高くなる傾向が生じてきます。例えば、電話を使って話される会話の音声を、暗号化して受信者へ送り、受信側の電話機で暗号化された音声信号を復号して、盗聴している人に会話の内容が分からないようにしている場合、電話機そのものの値段よりも、暗号化したり復号するための暗号機械の方が、はるかに高い価格になるでしょう。

それは、暗号化したり、復号する機械に詰め込まれた知識が、とても高度な数学理論に基づいたものであり、その理論を理解できなければ、暗号化された信号を盗み取っても、その内容を、理解できる形式に戻せないからです。現代の暗号は、数学の素数に関わる性質を利用している場合が多く、信号を暗号化したり、暗号化された信号を復号するためには、膨大な量の計算を高速に実行しなければなりません。つまり、暗号機械の中身は、小型のコンピュータです。そのコンピュータに計算を行わせるためのプログラムが重要なのです。

そのプログラムを作成するためには、基礎となる数学理論を理解し、プログラムを書くためのプログラミング言語を学ばなければなりません。その意味で、この場合、そのような電話機の中で、最も価値を生み出しているのは、数学理論の部分になっています。それが、重要な知的財産と言えます。しかし、素数の性質を応用した数学の理論と、それに基づく暗号化技術そのものは、現在の「特許権」に馴染まないのが現実です。

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